醒睡笑 巻2 名付け親方
雄長老の小者(こもの)に、鳥を刺す上手あり。前大樹(さきのたいじゆ)1)御耳に立ちし。内々尊意の旨、長老承り及び申され、「かたじけなき儀なり。様子たち聞きまかり出でよ。名をば松若といふなる。このままにてはいかが」とうかがふ。「さらば、伯耆(はうき)になれ」とありければ、「それはあまり分に過ぎて」と恐れたり。「大事なし。幸ひ柄差(えさし)ばうきに」。
一 雄長老の小者に鳥をさす上手あり前大樹 御耳にたちし内々尊意の旨長老承及 申され辱儀なり様子たち聞罷出よ名をは 松若といふなる此ままにてはいかかと伺ふ さらは伯耆になれとありけれはそれは あまり分に過てと恐れたり大事なし 幸柄さしはうきに/n2-5r