醒睡笑 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの
こびたる禅門、山林に行き暮れて一宿せり。亭坊(ていばう)向顔(かうがん)の後、「その方はいづれの道をか心にかけ給ふや」と問はれ、「打成一片(だじやういつぺん)1)歌の道に嗜みあり」と。「さあらば、わが身老衰せり。松鶴の齢(よはひ)によそへ、めでたう発句を」とありしに、しばらく案じて後、
この寺の坊主を松につるすかな
一 こびたる禅門山林に行暮て一宿せり亭坊(ていほう) 向顔(かうかん)の後其方はいつれの道をか心にかけ給ふ やととはれ不審片哥の道に嗜ありとさあ/n1-75r
らは我か身(み)老衰(ろうすい)せり松鶴の齢(よはひ)によそへ目出 たふ発句をとありしに暫(しはらく)案(あん)して後 此寺の坊主を松につるすかな/n1-75l