醒睡笑 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの
商人の常に祈念を頼みて行き通ふ寺あり。四国の方へ下る朝、今日舟の出で候ふまま暇乞ひに参りたるよし言ひければ、院主の口上にて、「とくより田舎への下向と聞きて、祈祷の旨(むね)ゆるがせなし。今朝もとくから起き、尊勝陀羅尼(そんしようだらに)1)をいかう読みたるぞなう」。
一 商人の常に祈念を頼て行かよふ寺あり 四国のかたへくたる朝今日舟の出候まま暇 乞に参たる由いひけれは院主の口上にてとく より田舎への下向とききて祈祷の旨ゆる かせなし今朝もとくからおき尊勝陀羅尼(そんせうたらに) をいかうよみたるそなふ/n1-69l