醒睡笑 巻1 鈍副子
若き男の聟入するといふに、知音の者異見し、「かまへて時宜(じぎ)を出(で)かせ」。心得たるよしにて行きしが、一円言の葉なし。
あまり本意(ほい)なく思ひ、立ちざまに手をきつとつき、「この中柱(なかばしら)はこなたのでござあるか。どれから参りたるぞ」。
一 わかき男の聟入するといふに知音の者異見(いけん) しかまへて時宜を出かせ心得たるよしにて 行しが一円言のはなしあまりほいなく思ひ 立さまに手をきつとつき此中柱(なかはしら)はこなたの/n1-58l
て御座あるかとれからまいりたるそ/n1-59r