醒睡笑 巻1 鈍副子
病癒えて後、よろこひごとの振舞ひあり。酒盛りのなかば、台の物に鶴の作りたるを1)取り上げ、「鶴の舞を見ばや」などはやされ、よき振りに舞おさめし2)を見、一腑(ひとふ)抜けたるお方立ちて、床に立てたる矢を取り手に持ち、「矢舞ひ3)を見ばや」などはやされ、また矢を一つ取りそへ、二つの矢の根を継ぎ合はせ、羽の方を左右へなし、「長矢舞ひ4)を見ばや」など舞おさめぶりは。
一 病(やまひ)愈(いゑ)て後よろこひ事の振舞あり酒 もりのなかは臺(たい)の物に鶴(つる)のつくりたを取 あけ靏の舞を見はやなとはやされよきふりに 舞おためしを見一腑ぬけたるおかた立て 床にたてたる矢をとり手にもちやまひを 見はやなとはやされ又矢を一つとりそへ二 つの矢の根をつき合羽のかたを左右へなし/n1-50l
なかやまひを見はやなと舞おさめぶりは/n1-51r