目次

撰集抄

巻8第21話(96) 忠岑(歌)

校訂本文

昔、忠岑1)といへる歌詠みの、如月のころ、越(こし)の方におもむきける。山に雲そびきて、木々もいと見え分かざるに、雪の多く積もりて見え侍りければ、

  雲の居るこしのしら山おひにけり多くの年の雪積もりつつ

と詠み侍りける。

いとめでたく侍り。

翻刻

昔忠峯といへる哥読のきさらきの此こしの
方におもむきける山にくもそひきて木々もいと
見えわかさるに雪のおほくつもりて見え侍り
けれは
  雲のゐるこしのしら山おひにけり
  おほくの年の雪つもりつつ
と読侍りけるいと目出く侍り/k249l
1)
壬生忠岑