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無名抄

第62話 隠作者事

校訂本文

隠作者事

大方は、歌を判するには作者を隠すといひながら、ひとへに知らぬもゆゆしき大事なり。また、名、現れたるもはばからしく、表(おもて)に負くること多かり。ただ隠せるやうにて、内々(うちうち)にいささか心得たるが、めでたきなり。

翻刻

隠作者事
大方は哥を判するには作者をかくすといひなからひと
へにしらぬもゆゆしき大事也又名あらはれ/e50l
たるもははからしくおもてにまくる事おほ
かりたたかくせるやうにてうちうちにいささか心え
たるかめてたきなり/e51r