蒙求和歌
桓温奇骨
晋の桓温、字(あざな)は子元といふ。父は字は茂論1)といふ。
桓温、生まれての年、温嶠といふ人、相卜していはく、「この児は奇骨あり。こころみに泣く声を聞かむ」と言ふ。児泣く声を聞くに、「まことに英物なりけり」と言ふ。これによりて、温嶠が一字を取りて、桓温とは名付ける。
人となりては、まづ大司馬になされて、次に丞相になされにけり。温嶠が昔相せし所、たがはず。天下無双の名士たりけり。
根ざすよりかつがつ人の仰(あふ)ぎしやこだかかるべき松の行く末
桓温奇骨 晋ノ桓温アサナハ子元トイフ父ハア/サナハ茂論トイフ桓温ウマレテノトシ 温嶠トイフ人相卜シテ云クコノ児ハ奇骨アリ心ミニ ナクコヱヲキカムトイフ児ナクコヱヲキクニマコトニ英 物ナリケリトイフコレニヨリテ温嶠カ一字ヲトリテ桓 温トハナツケケルヒトトナリテハマツ大司馬ニナサレテツキニ 丞相ニナサレニケリ温嶠カムカシ相セシトコロタカハス天下 無双ノ名士タリケリ/d2-56r
ネサスヨリカツカツ人ノアフキシヤ コタカカルヘキマツノユクスヱ/d2-56l