蒙求和歌
文伯羞鼈
文伯、南宮敬叔が酒を得て、鼈をまうけて、露都父1)を迎へて、客として、客には少しきを勧め、おのが身には多くしければ、都父、怒りて食はずして出でぬ。
文伯が母敬姜、これを聞きていはく、「祭には尸(し)を養(やしな)ふ。饗(きやう)には上賓を養(やしな)ふ」と言へり。
さて、文伯が礼を知らざる心を恥ぢしめて、追ひ出でて、五日、家に入れざりけり。
敬姜は穆伯が妻、文伯が母、莒女なり。
春山に友をこひける鶯(うぐひす)のおのれひとりや花に酔(ゑ)ふべき
文(フム)伯(ハク)羞鼈(ヘツ) 〃〃南宮敬叔カ酒ヲエテ鼈(□ヘノア□□)ヲ/マウケテ露(ロ)都(ト)父(フ)ヲムカヘテ客トシテ 客ニハスコシキヲススメヲノカミニハヲホクシケレハ都文イカリテク ハスシテイテヌ文伯カ母敬(ケイ)姜(シヤウ)コレヲキキテイハク祭ニハ養(ヤシナフ)ニハ 尸(シヲ)饗(キヤウニハ)養(ヤシナフ)上賓ヲトイヘリサテ文伯カ礼ヲシラサルココ ロヲハチシメテヲイイテテ五日家ニイレサリケリ敬姜ハ穆 伯カ妻文伯カ母莒(キヨ)女也 ハルヤマニトモヲコヒケルウクヒスノヲノレヒトリヤハナニエフヘキ/d2-36l