蒙求和歌
欒巴巽酒
欒巴、字(あざな)叔元、武帝のとき尚書となる。
正旦に群臣1)を召して大会あり。欒巴、酒を含みて西南に向ひて吹きけり。おほやけ、ゆゑを問ひ給ふ。「蜀江に火災あり。かるがゆゑに、これを救ふ」と申す。
人を遣はして、見せらるるに、「失火ありといへども、にはかに東北(うしとら)より大雨あり。その雨、酒気ありて、火を消ちおはりぬ」と奏せり。
都より降り来る雨や春草(はるくさ)のもえいづる野辺をそらに知りける
欒(ラ)巴巽(ソム)酒(シユ) 〃〃字叔(シク)元(クヱム)為尚書ト武帝ノトキ/正(セイ)旦(タム)ニ郡臣ヲメシテ大会(クワイ)アリ欒巴/d2-32r
酒ヲフクミテ西南(サニ)ムカヒテフキケリヲホヤケユエヲ問ヒ給蜀(シヨク) 江(カウニ)火灾アリカルカユエニコレヲスクフト申ス人ヲツカハシテミセラルル ニ失火アリトイヘトモニハカニ東北(ウシトラ)ヨリヲヲアメアリソノアメ酒 気アリテ火ヲケチヲハリヌト奏(ソウ)セリ ミヤコヨリフリクルアメヤハルクサノ モヘイツルノヘヲソラニシリケル/d2-32l