蒙求和歌
庶女振風
斉の庶女がをば、一人の女(むすめ)ありけり。この女、「母の財(たから)を取らむ」と思ふ心ありて、母を殺して、庶女に1)、「かく」と言ひけり。
庶女、これを聞くより、あさましく、心憂く思へども、人にはえ言はずして、天に告げてけり。
時に雷電下りて、景公台を打ち傾(かたぶ)け、海水、多きに出でて、世、驚き、人、ことごとく騒ぎ惑ひけり。
天(あめ)とよみ風騒ぐなり世の中の人の心のうき雲の空
庶(シヨ)女振(シム)風 斉ノ庶女カヲハヒトリノ女メアリケリ/コノ女メハハノタカラヲトラムト思フ心/d2-24l
アリテハハヲコロシテ庶女カクトイヒケリ庶女コレヲキ クヨリアサマシク心ウク思ヘトモ人ニハエイハスシテ天ニツケテ ケリ時ニ雷電クタリテ景公台ヲウチカタフケ海水 ヲホキニイテテヨヲトロキ人コトコトクサハキマトヒケリ アメトヨミ風サハクナリヨノ中ノ 人ノココロノウキクモノソラ/d2-25r