蒙求和歌
仲文照鏡
仲文は殷の人なり。もとより名望高かりき。
朝に仕へては、「政(まつりごと)を執るべき身ぞ」と思ひける。そのことむなしくして、東陽の太守になされけるを、憂きことに思ひけり。
このゆゑに、桓胤とともに、謀反を起しけり。その時、鏡を見るに、頭(かしら)見えざりければ、驚き恐れけるほどに、後に殺されにけり1)。
仲文照鏡 仲文ハ殷ノ人也モトヨリ名望タカカリ/キ朝ニツカヘテハマツリ事ヲトルヘキ/d2-19r
ミソト思ヒケルソノ事ムナシクシテ東陽ノ大守ニナサレケルヲ ウキ事ニ思ヒケリコノユヱニ桓胤トトモニ謀反ヲヲコシケリソノ 時カカミヲミルニカシラミエサリケレハヲトロキヲソレケルホト ニ後ニコロサレニケリ/d2-19l