蒙求和歌
五倫十起
後漢の第五倫1)、字(あざな)伯魚といふ。
ある人、問ひていはく、「君、私(わたくし)ありや否や」。問ふに答へていはく、「わが兄(このかみ)の子ありき。昔、病(やまひ)せし時、一夜に十度(とたび)起きて、見とぶらひて、退き返りては、すなはち安く寝(い)ねられき。わが子病する時、行きて見ずといへども、終夜(よもすがら)寝られずして、歎き明かす。これをもて、これをはかるに、私なしと言はむや」と答へけり。
起き臥して十返(とかへり)人を問ふよりも子を思ふ床(とこ)は休む間ぞなき
五倫十起 後漢ノ弟五倫アサナ伯魚ト云アル人/トヒテ云クキミワタクシアリヤイナヤトウニ コタヘテ云クワカコノカミノコアリキ昔シヤマヒセシトキ一 夜ニトタヒヲキテミトフラヒテシリソキカヘリテハスナハチ ヤスクイネラレキワカコヤマヒスル時ユキテミスト云トモ ヨモスカラネラレスシテナケキアカスコレヲモテコレヲ/d2-17l
ハカルニワタクシナシト云ハムヤトコタヘケリ ヲキフシテトカヘリ人ヲトフヨリモコヲヲモフトコハヤスムマソナキ/d2-18r