古本説話集
貫之事
貫之の事
今は昔、東人(あつまうど)の、歌いみじう好み詠みけるが、蛍を見て、
あなてりや虫のしや尻に火のつきて小人玉(こひとだま)とも見えわたるかな
「東人の様(やう)に詠まむ」とて、まことには、貫之1)が詠みたりけるとぞ。
いまはむかしあつまうとの哥いみしう このみよみけるかほたるをみて あなてりやむしのしやしりにひのつきて こひとたまともみえわたるかな あつま人の様によまむとてまことには 貫之かよみたりけるとそ/b70 e36