十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事
宗家大納言1)とて、神楽・催馬楽歌ひて、やさしく神さびたる人おはしき。北の方は後白河法皇の女房、右衛門佐と申しける。
宗経の中将2)生みなどしてのちに、かれがれになりて、遠ざかり給ひけるに、
あふことの絶えば命も絶えなんと思ひしかどもあられける身を
と詠みてやられければ、返事はなくて、車を遣はして、迎へとりて、年ごろになりにけり。
四十九宗家大納言トテ、神楽催馬楽ウタヒテ、ヤサシク神 サヒタル人オハシキ、北方ハ後白河法皇ノ女房右衛門佐 ト申ケル、ムネツネノ中将ウミナトシテ、後ニカレカレニナリ/k83
テトヲサカリ給ケルニ、 アフ事ノタエハ命モタエナント、思シカトモアラレケル身ヲ トヨミテヤラレケレハ、返事ハナクテ、車ヲツカハシテムカ ヘトリテ、年コロニナリニケリ、