十訓抄 第七 思慮を専らにすべき事
魯の仲尼1)、門徒を具して、路におはしけるに、ある所に、垣より馬の頭(かしら)をさし出だしたるを見て、「牛」とのたまひけり。
はじめはこれを思ひ分かず、おのおの案じめぐらすに、顔回より始めて、思慮の深き次第に心得ける。
日よみの「午」の頭を出すは、「牛」なり。
七魯仲尼門徒ヲ具シテ路ニオハシケルニ、或所ニカキ ヨリ馬ノカシラヲ指出シタルヲ見テ、牛トノ給ケリ、 始ハ是ヲ思ワカス、各案シメクラスニ、顔回ヨリ始テ 思慮ノ深キ次第ニ心得ケル、日ヨミノ午ノカシラヲ 出ハ牛也、/k122