十訓抄 第五 朋友を撰ぶべき事
村上帝かくれさせ給ひて後、枇杷大納言延光卿1)、朝夕恋ひ忍び奉りて、御形見の色を一生脱ぎ給はざりけり。
ある夜の夢に、御製賜はらせける、
月輪日本雖相別
温意清涼昔至誠
兜率最高帰内院
如今於彼語卿名
大納言、夢覚めて、驚きて、これを和し奉る。
再拝聖顔一寝程
恩言芳処奏中情
夢中如覚夢中事
雖尽一生豈早驚
かの小野小町が歌、思ひ出でらる。
思ひつつ寝(ぬ)ればや人の見えつらん夢と知りせば覚めざらましを
二邑上帝カクレサセ給テ後、枇杷大納言延光卿 朝夕恋忍ヒ奉テ、御カタミノ色ヲ一生ヌキ給ハ サリケリ、或夜ノ夢ニ、御製給ハラセケル、 月輪日本雖相別、温意清涼昔至誠、 兜率最高帰内院、如今於彼語卿名、 大納言夢覚テ驚テ是ヲ和シ奉ル、 再拝聖顔一寝程、恩言芳処奏中情 夢中如覚夢中事、雖尽一生豈早驚/k5
彼小野小町カ哥被思出 思ヒツツヌレハヤ人ノ見エツラン夢トシリ セハサメサラマシヲ、/k6