今物語
ある女房の、賀茂の糺(ただす)に七日籠りて、まかり出づるとて、物に書き付けける、
鳥の子のただすの中に籠り居てかへらむ時はとばざらめやは
と詠めりければ、「あはれ」とや思し召しけむ、やがて、めでたき人に思はれて、幸ひ人と言はれけり。
ある女房の賀茂のたたすに七日こもりてまかりいつる とて物にかきつけける 鳥の子のたたすのなかにこもりゐてかへらむ時はとはさらめやは とよめりけれはあはれとやおほしめしけむやかてめてたき 人におもはれてさいわい人といはれけり/s20r