平中物語
この同じ男のもとに、国経の大納言1)のみもとより、いささかなることのたまへるに、「返り事聞こゆ」とて、おもしろき菊にぞ付けたりける。
さりければ、いかなることをか書いたりけむ。たちかへり、また、のたまへる。
みよを経てふりたる翁杖突きて花のありかを見るよしもがな
とありければ、返し。
玉鉾(たまぼこ)に君し来寄らば浅茅生(あさぢふ)にまじれる菊の香(か)はまさりなん
とてたてまつりけるこのおなしおとこ のもとにくにつねの大納言のみもとより/26ウ
いささかなる事のたまへるにかへり事 きこゆとておもしろききくにそつけ たりけるさりけれはいかなることをかか いたりけんたちかへり又のたまへる みよをへてふりたるおきなつゑつき てはなのありかをみるよしもかな とありけれはかへし たまほこにきみしきよらはあさち ふにましれるきくのかはまさりなん/27オ