平中物語
また、この男、正月の一日の日、雨のいたう降りてながめ居たるに、友達のもとより、かくぞ言ひたる
春雨にふりかはりゆく年月の年の積りや老いになるらん
さて、その友達の久しく訪れねば、男、また
君が思ひ今は幾らに分くればかわれに残りの少なかるらむ
返し
年ごとに歎きの数はそふれども誰にか分けん二心(ふたごころ)なし
さてやみにけり又このおとこ正月のついたち のひあめのいたうふりてなかめゐたる にともたちのもとよりかくそいひたる 春さめにふりかはりゆくとし月の/11オ
としのつもりやおいになるらん さてそのとんたちのひさしくおとつれね は男又 きみかおもひいまはいくらにわくれはか 我にのこりのすくなかるらむ かへし としことになけきのかすはそふれとん たれにかわけんふた心なし/11ウ