世継物語 ====== 第44話 御堂失せおはしまして御葬送の夜ただあきら内供といひける人・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 今は昔、御堂失せおはしまして、御葬送の夜、ただあきら内供((栄花物語「忠命内供」))といひける人、   煙絶え雪降り積もる鳥辺野は鶴の林の心地こそすれ かの上人のほどを詠みたるなるべし。長谷の入道、聞き給ひて、「たきぎつきこといはでや」とぞ、のたまひける。中宮大夫に、長谷より聞こえ給ふ。   見し人の亡くなりゆくを聞くままにいとどみ山ぞ寂しかりける 御返し   消え残るかしらの雪を払ひつつ寂しき山を思ひやるかな 長谷の入道とは、四条大納言((底本傍注「公任」))の事なり。中宮大夫は斉信大納言なり。 ===== 翻刻 ===== 今は昔御たううせおはしまして御さうそうの夜たた あきら内供といひける人 煙たえ雪降つもる鳥へ野は鶴の林の心ちこそすれ かの上人のほとをよみたる成へし長谷の入道きき給 ひてたききつきこといはてやとその給ける中宮大夫に 長谷よりきこえ給ふ 見し人のなく成行を聞ままにいととみ山そさひしかりける 御返し きえ残るかしらの雪をはらひつつさひしき山を思ひやる哉 長谷の入道とは四条大納言(公任)事也中宮大夫は斉のふ/24オ 大納言也/24ウ