世継物語 ====== 第37話 一条院の御時御仏名のまたの日雨いみじう降りて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 一条院の御時、御仏名のまたの日、雨いみじう降りて「つれづれなり」とて、宮の方にて御遊びありけり。道方(みちかた)の少納言、琵琶いとめでたし。 まさただ((枕草子「済政(なりまさ)」))の琴、行義(ゆきよし)笛、経房(つねふさ)の中将笙の笛、一わたり遊びて、琵琶弾きやみたるほどに、大納言殿、「琵琶、声やむで物語せんと。遅し遅し」と過ぐし給へり。 いみじう折に合ひたるに、道方の弁、ふとかき合はせたる、いみじう目出度し。大納言とは帥の内の大殿の事なり。 ===== 翻刻 ===== 一条院の御時御仏名の又の日雨いみしうふりてつれつれ 也とて宮の方にて御あそび有けりみちかたの少納言琵 琶いとめてたしまさたたの琴ゆきよし笛つねふさの 中将笙の笛一わたりあそひてひわ引やみたる程に 大納言殿琵琶こゑやむて物語せんとをそしをそしとす くし給へりいみしうおりにあひたるにみちかたの弁ふとかき/20ウ あはせたるいみしう目出度大納言とは帥の内の大い とのの事なり/21オ