世継物語 ====== 第26話 五月の長雨のころ上の御局の御簾の前に・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 今は昔、五月の長雨のころ、上の御局の御簾の前に、斎院頭((枕草子「斉信(ただのぶ)の」。斉信を斎院に、能(の)を頭に誤ったものだろう。))中将、寄り居給へりけるが、((底本「が」の後に「の」。衍字と見て削除する))まことにめでたく香ばしう、その物とも思へず。 雨にしめりたるほどの、いみじうおかしかりけり。五六日まで簾に移りたりければ、若き女房達、染みかへり、めであはれたりけり。 一条院の御時、皇后の御方にぞ。 ===== 翻刻 ===== 今は昔五月のなか雨の比うへの御局のみすのまへに 斎院頭中将よりゐ給へりけるかのまことにめてた く香はしうその物ともおほへす雨にしめりたる程 のいみしうおかしかりけり五六日まて簾にうつりたり けれはわかき女房達しみかへりめてあはれたりけり一 条院の御時皇后の御方にそ/15オ