世継物語 ====== 第24話 二月晦日がたに風うち吹き雪うち降るほど公任宰相中将とて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 今は昔、二月晦日がたに、風うち吹き、雪うち降るほど、公任、宰相中将とて聞こえけるなり。清少納言がもとへ、懐紙(ふところがみ)に書きて、   少し春ある心ちこそすれ とありけり。「げに、古歌のけしきにいとよくあひたるを、いかが付くべからん」と、思ひわづらふ。   空さへて花にまがひて散る雪に と、めでたく書きたり。いみじう褒め給ひけり。 俊賢(としかた)の宰相、「内侍になさばや」など、のたまひけりとぞ。 ===== 翻刻 ===== 今は昔二月晦日かたに風うち吹雪うちふる程公任 宰相中将とてきこえける也清少納言か許へふところか/14オ みにかきて すこしはるある心ちこそすれ とありけりけに古哥のけしきにいとよくあひたるを いかかつくへからんとおもひわつらふ 空さえて花にまかひてちる雪に とめてたくかきたりいみしうほめ給けりとしかたの宰相 ないしになさはやなとのたまひけりとそ/14ウ