世継物語 ====== 第3話 和泉式部がむすめ小式部内侍失せにければ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 今は昔、和泉式部がむすめ、小式部内侍失せにければ、その子どもを見て、式部、   とどめ置きて誰を哀れと思ふらん子はまさりけり子はまさらなん また、書写の聖の御もとへ   暗きより暗き道にぞ入ぬべきはるかに照らせ山の端の月 と詠み奉りたりければ、御返事に袈裟をぞ遣はしたりける。 病づきて失せんとしける日、その袈裟をぞ着たりける。歌の徳に後世も助かりけんと、目出度きことなり。 ===== 翻刻 ===== 今は昔和泉式部かむすめ小式部内侍うせにけれは 其子どもをみてしきぶ ととめをきて誰を哀と思ふらんこはまさりけりこはまさらなん 又しよしやの聖の御許へ くらきよりくらき道にぞ入ぬへきはるかにてらせ山のはの月 とよみ奉りたりけれは御返事にけさをぞ遣はしたり ける病つきてうせんとしける日其けさをそきたりける歌 のとくに後世もたすかりけんと目出度事也/5オ