宇治拾遺物語 ====== 第115話(巻10・第2話)放鷹楽、明暹に是季が習ふ事 ====== **放鷹楽明暹ニ是季ガ習事** **放鷹楽、明暹に是季が習ふ事** ===== 校訂本文 ===== これも今は昔、放鷹楽(ほうようらく)といふ楽をば、明暹已講(みやうせんいこう)、ただ一人、習ひ伝へたりけり。 白河院((白河天皇))、野行幸あさてといひけるに、山階寺((興福寺))の三面の僧坊にありけるが、「今宵は門なさしそ。尋ぬる人あらんものか」と言ひて待りけるが、案のごとく入り来ぬる人あり。これを問ふに「是季((大神惟季))なり」と言ふ。「放鷹楽習ひにか」と言ひければ、「しかなり」と答ふ。すなはち坊中に入れて、件(くだん)の楽を伝へけり。 ===== 翻刻 ===== これも今はむかし放鷹楽と云楽をは明暹已講たた一人習 つたへたりけり白河院野行幸あさてといひけるに山階寺の 三面の僧坊にありけるかこよひは門なさしそ尋ぬる人あらんもの かといひて待けるか案のことく入きぬる人ありこれをとふに是 季なりといふ放鷹楽ならひにかといひけれはしかなりとこたふす/下23オy299 なはち坊中に入て件の楽をつたへけり/下23ウy300