大和物語 ====== 第162段 また在中将内裏にさぶらひけるに御息所の御方より忘れ草をなん・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== また在中将((在原業平))、内裏(うち)にさぶらひけるに、御息所の御方より、忘れ草をなん、「これは何とかいふ」とて、賜へりければ、中将、   忘れ草生(お)ふる野辺とは見るらめどこは忍ぶなりのちも頼まん となんありける。 同じ草を、忍ぶ草・忘れ草といへば、それによりなん詠みたりけり。 ===== 翻刻 ===== おかしとおほしけり又 さい中将うちにさふらひけるにみやす ところの御かたよりわすれくさをな んこれはなにとかいふとて給えりけ れは中将 わすれくさおふるのへとはみるら めとこはしのふなりのちもたのまん となんありけるをなしくさをしのふ/d63l くさわすれくさといへはそれにより なんよみたりけり/d64r