大和物語 ====== 第153段 奈良の御門位におはしましける時嵯峨の御門は坊におはしまして・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== ならの御門((平城天皇))、位におはしましける時、嵯峨の御門((嵯峨天皇))は坊におはしまして、詠みて奉り給ひける。   みな人のその香に((「香に」は底本「かみ」。諸本により訂正))めづる藤袴(ふぢばかま)君のみためと手折(たお)りたる今日 御門の御返事、   折る人の心のままに藤袴むべ色深く匂ひたりけり ===== 翻刻 ===== 平城天皇 大同天子 ならのみかとくらひにおはしまし けるときさかのみかと(弘仁)は坊におは しましてよみてたてまつり給ける みな人のそのかみめつるふち はかまきみのみためとたをりたるけふ 御かとの御返事 をる人のこころのままにふちはか まむへいろふかくにほひたりけり/d54r