大和物語 ====== 第135段 三条の右大臣のむすめ堤の中納言に逢ひはじめ給ひけるあひだは・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 三条の右大臣((藤原定方))のむすめ、堤の中納言((藤原兼輔))に逢ひはじめ給ひけるあひだは、内蔵助(くらのすけ)にて((「にて」は底本「まて」。諸本により訂正。))、内裏(うち)の殿上をなんしける。女は、あはんの心やなかりけん、心もゆかずなんいますかりける。 男も宮仕へし給ひければ、つねにもいませざりけるころ、女、   薫物(たきもの)のくゆる心はありしかどひとりはたえて寝られざりけり 返し、上手なれば良かりけめど、聞かねば書かかず。 ===== 翻刻 ===== 延喜九年正月蔵人左衛門佐元右兵衛佐内蔵助(十三年/左少将)/d22r 三条の右大臣のむすめつつみの中納言 にあひはしめたまひけるあひたはく らのすけまてうちの殿上をなんし ける女はあはんのこころやなかりけん こころもゆかすなんいますかりけるお とこもみやつかへしたまひけれはつ ねにもいませさりけるころ女 たきもののくゆるこころはありし かとひとりはたえてねられさりけり かへし上すなれはよかりけめとき かねはかかす/d22l