大和物語 ====== 第132段 同じ御門の御時躬恒を召して月のいとおもしろき夜・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 同じ御門((醍醐天皇。[[u_yamato131|131段]]参照。))の御時、躬恒((凡河内躬恒))を召して、月のいとおもしろき夜、御遊びなどありて、「月を弓張(ゆみはり)といふは、何の心ぞ。そのよし、つかうまつれ」と仰せ給ひければ、御階(みはし)のもとにさぶらひて、つかうまつりける。   照る月を弓張とのみいふことは山の端(は)さしていればなりけり 禄(ろく)に大袿(おほうちぎ)かづきて、また、   白雲のこのかたにしもおりゐるは天つ風こそ吹きてきつらし ===== 翻刻 ===== おなしみかとの御とき躬恒をめして 月のいとおもしろきよ御あそひなと ありて月をゆみはりといふはなにの こころそそのよしつかうまつれと おほせたまひけれはみはしのもとに さふらひてつかうまつりける/d20l てる月をゆみはりとのみいふことは やまのはさしていれはなりけり ろくにおほうちきかつきて又 しら雲のこのかたにしもをりゐ るはあまつかせこそふきてきつらし/d21r