大和物語 ====== 第100段 大井に季縄の少将住み給ひけるころ亭子の御門ののたまひける・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 大井に季縄(すゑなは)((藤原季縄))の少将住み給ひけるころ、亭子の御門ののたまひける。「花おもしろくなりなば、必ず御覧ぜん」とありけるを、思し忘れて、おはしまさざりけり。 されば、少将、   散りぬればくやしきものを大井川岸の山吹今日さかりなり とありければ、いたう((「いたう」は底本「い」なし。諸本により補入。))あはれがり給ひて、急ぎおはしまして御覧じける。 ===== 翻刻 ===== おほゐにすゑなはの少将すみ給け るころていしの御かとののたまひけ るはなをもしろくなりなはかな らすこらむせんとありけるをおほし わすれておはしまささりけりされ は少将 ちりぬれはくやしきものをおほ 井かはきしのやまふきけふさかりなり とありけれはたうあはれかり給ていそきおはしまして御/d50r らんしける同季縄の少将やまひにいた/d50l