大和物語 ====== 第99段 亭子の御門の御ともに太政大臣大井につかうまつり給へり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 亭子の御門((宇多天皇))の御ともに、太政大臣(おほきおとど)((藤原忠平))、大井((大井川。大堰川とも))につかうまつり給へり。 紅葉、小倉の山に、いといろいろおもしろくありければ、かぎりなくめで給ひて、「行幸(ぎやうかう)もあらんに、いと興(けう)ある所になんありける。必ず奏してせさせ奉らん」なんど申し給ひて、ついでに、   小倉山峰のもみぢ葉心あらばいまひとたびの行幸(みゆき)待たなん となんありける。 かくて、帰り給ひて、奏し給ひければ、「いと興あることなり」とてなん、大井の行幸といふこと、始め給ひける。 ===== 翻刻 ===== ていしのみかとの御ともにおほきおとと おほゐにつかうまつりたまえり 紅葉おくらのやまにいといろいろおもし ろくありけれはかきりなくめて給てき やうかうもあらんにいとけうある所に なんありけるかならすそうしてせ させたてまつらんなんと申給てついてに おくらやまみねのもみち葉心あ らはいまひとたひのみゆきまたなん となんありけるかくてかへり給てそう したまひけれはいとけうあることなり/d49l とてなんおほゐのきやうかうといふ ことはじめたまひける/d50r