大和物語 ====== 第93段 これもおなじ中納言斎宮の皇女を年ごろよばひ奉りて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== これもおなじ中納言((藤原敦忠。[[u_yamato092|92段]]参照))、斎宮の皇女((醍醐天皇皇女雅子内親王))を年ごろよばひ奉りて、今日明日逢ひなんとしけるほどに、伊勢の斎宮の御占(みうら)にあひ給ひにけり。「いふかひなく、口惜し」と、男、思ひ給ひけり。 さて、詠みて奉り給ひける。   伊勢の海の千尋(ちひろ)の浜に拾ふとも今はかひなく思ほゆるかな となんありける。 ===== 翻刻 ===== 承平二年卜定雅子母更衣周子 これもおなし中納言さい宮の御こをとし ころよはひたてまつりてけふあす あひなんとしけるほとに伊勢のさい 宮の御うらにあひたまひにけり いふかひなくくちをしとおとこおもひ/d46r たまひけりさてよみてたてまつり たまひける 伊勢のうみのちひろのはまにひ ろふともいまはかひなくおもほゆるかな となんありける/d46l