大和物語 ====== 第86段 正月のついたちごろ大納言殿に兼盛参りたりけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 正月(むつき)のついたちごろ、大納言殿((藤原顕忠))に、兼盛((平兼盛))参りたりけるに、ものなどのたまはせて、すずろに、「歌詠め」とのたまひければ、   今日よりは荻の焼け原((底本「やへ原」。季節が合わないため、諸本により訂正))かき分けて若菜つみにと誰を誘はん と詠みたりければ、ことにめで給ひて、御返し、   片岡にわらび萌えずはたづねつつ心やりにや若菜つままし となん詠み給ひける。 ===== 翻刻 ===== むつきのついたちころ大納言とのに かねもりまいりたりけるに物なと のたまはせてすすろにうたよめと/d41l のたまひけれは けふよりはをきのやへはらかき わけてわかなつみにとたれをさそはん とよみたりけれはことにめて給て 御返し かたをかにわらひもえすはたつね つつこころやりにやわかなつままし となんよみ給ける/d42r