大和物語 ====== 第77段 これも同じ皇女に同じ男・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== これも同じ皇女((宇多天皇皇女孚子内親王。[[u_yamato076|76段]]参照))に、同じ男((源嘉種。[[u_yamato076|76段]]参照))、   長き夜をあかしの浦に焼く塩の煙(けぶり)は空に立ちやのぼらぬ かくて、忍びつつ逢ひ給ひけるほどに、院に、八月十五夜せられけるに、「参り給へ」とありければ、参り給ふに、院にたは逢ふまじければ、「せめて今宵はな参り給ひそ」と、とめけり。 されど、召しなりければ、えとどまらで、急ぎ参り給ひければ、嘉種、   竹取(たかとり)がよよに泣きつつとどめけむ君は君にと今宵しもゆく ===== 翻刻 ===== これもおなし御こにをなしおとこ なかきよをあかしのうらにやくし ほのけふりはそらにたちやのほらぬ かくてしのひつつあひたまひけるほと に院に八月十五夜せられけるにまい り給へとありけれはまいり給に院に たはあふましけれはせめてこよひは なまいり給そととめけりされと/d38l めしなりけれはえととまらていそき まいり給けれはよしたね たかとりかよよになきつつととめ けむきみはき□にとこよひしもゆく/d39r