大和物語 ====== 第67段 またとし子雨の降りける夜千兼を待ちけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== また、とし子、雨の降りける夜、千兼を待ちけり。雨にや障(さは)りけん、来ざりけり。 壊(こぼ)れたる家にて、いといたく漏りけり。 「雨のいたく降りしかば、え参らずなりにけり。さる所に、いかでかものし給ふ」と言へりければ、とし子、   君を思ふひまなき宿と思へども今宵の雨は漏らぬ間ぞなき ===== 翻刻 ===== 又としこあめのふりけるよちか ぬをまちけりあめにやさはりけん こさりけりこほれたるいへにていと いたくもりけりあめのいたくふり しかはえまいらすなりにけりさる 所にいかてかものし給といえりけれは としこ きみをおもふひまなきやととおもへ ともこよひのあめはもらぬまそなき/d34r