大和物語 ====== 第54段 右京の大夫宗于の君にてうに当りける人博奕をして・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 右京の大夫(かみ)宗于((源宗于))の君、にてう((「にらう」(二郎)か。))に当りける人、博奕(ばくやう)をして、親にもはらからにも憎まれければ、「足の向かん方(かた)へ行かむ」とて、人の国へなん行(い)きける。 さて、思ひける友達のもとへ、詠みておこせたりける。   しをりして行く旅なれどかりそめの命知らねば帰りしもせじ ===== 翻刻 ===== 右京のかみむねゆきのきみにてうに あたりける人はくやうをしてをやに もはらからにもにくまれけれはあしの むかんかたへゆかむとて人のくにへなん いきけるさておもひけるともたちの もとへよみておこせたりける しをりしてゆくたひなれとかりそ めのいのちしらねはかえりしもせし/d26l