大和物語 ====== 第45段 堤の中納言の君十三の皇子の母御息所を内裏に奉り給ひけるはじめに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 堤の中納言の君((藤原兼輔))、十三の皇子((醍醐天皇第十三皇子章明親王))の母御息所((藤原桑子))を、内裏(うち)に奉り給ひけるはじめに、「御門はいかが思し召すらん」など、いとかしこく思ひ歎き給ひける。 さて、御門に詠みて奉りける。   人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな 先帝((醍醐天皇))、いとあはれに思し召したりけり。御返事ありけれど、人は知らず。 ===== 翻刻 ===== つつみの中納言の君十三の御このはは 宮す所をうちにたてまつりたま ひけるはしめにみかとはいかかおほし めすらんなといとかしこくおもひ/d24r なけきたまひけるさてみかとによ みてたてまつりける ひとのをやのこころはやみにあらねと もこを思ふみちにまとひぬるかな 先帝いとあはれにおほしめしたりけり 御返事ありけれとひとはしらす/d24l