大和物語 ====== 第28段 同じ人のかの父の兵衛佐の失せにける年の秋家に・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 同じ人((戒仙。[[u_yamato027|前段]]参照。))の、かの父の兵衛佐の失せにける年の秋、家にこれかれ集まりて、宵より酒飲みなどす。 いますからぬことなどの、あはれなることを、客人(まらうど)も主(あるじ)も恋ひけり。あさぼらけに、霧立ち渡りけり、客人、   朝霧の中に君ますものならば晴るるまにまに嬉しからまし と言ひけり。戒仙(かいせう)、返し。   ことならは晴れずもあらなん朝霧のまぎれに見えぬ君と思はん 客人は、貫之((紀貫之))・友則((紀友則))などになんありける。 ===== 翻刻 ===== をなしひとのかのちちの兵衛佐のうせに けるとしのあきいへにこれかれあつ まりてよひよりさけのみなとすいますか らぬことなとのあはれなることをまら うともあるしもこひけりあさほら けにきりたちわたりけりまらうと あさきりのなかにきみますものならは/d17l はるるまにまにうれしからまし といひけりかいせうかへし ことならははれすもあらなん あききりのまきれにみえぬきみと思はん まらうとは貫之友則などになんありける/d18r