大和物語 ====== 第19段 同じ人同じ御子の御もとに久しくおはしまさざりければ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 同じ人((二条の御息所。[[u_yamato0018|前段]])参照。)、同じ御子((式部卿宮(宇多天皇皇子敦慶親王)。[[u_yamato0018|前段]])参照。))の御もとに、久しくおはしまさざりければ、秋のことなりけり。   世に経れど恋もせぬ身の夕さればすずろにものの悲しきやなぞ とありければ、御返し、   夕暮れにもの思ふときは神無月われも時雨(しぐれ)におとらさりけり となむありける。 心に入らで、悪しくなん詠み給ひける。 ===== 翻刻 ===== とありけるをなし人をなし御子の御/d13l もとにひさしくおはしまささりけれは あきのことなりけり よにふれとこひもせぬ身のゆふさ れはすすろにもののかなしきやなそ とありけれは御かへし ゆふくれにものおもふときは神な 月われもしくれにおとらさりけり となむありけるこころにいらてあしくなん よみたまひける/n14r