徒然草 ====== 第242段 とこしなへに違順に使はるることはひとへに苦楽のためなり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== とこしなへに違順(ゐじゆん)に使はるることは、ひとへに苦楽(くらく)のためなり。 楽といふは、好み愛することなり。これを求むること、止む時なし。楽欲(げうよく)する所、一つには名なり。名に二種あり。行跡と才芸との誉れなり。二つには色欲、三つには味はひなり。よろづの願ひ、この三つにはしかず。 これ、顛倒(てんだう)の相よりおこりて、そこばくの煩ひあり。求めざらんにはしかじ。 ===== 翻刻 ===== とこしなへに。違順につかはるる事は。 ひとへに苦楽のため也。楽といふはこのみ/k2-77l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0077.jpg 愛する事なり。是を求ること。やむ時 なし。楽欲する所。一には名也。名に二種 あり。行跡と才藝との誉也。二には色 欲。三には味なり。万のねがひ此三にはし かず。是顛倒の相よりおこりて。若干 のわづらひあり。もとめざらんにはしかじ/k2-78r http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0078.jpg