徒然草 ====== 第230段 五条内裏には妖物ありけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 五条内裏には妖物(ばけもの)ありけり。 藤大納言殿((藤原為世))、語られ侍りしは、殿上人ども、黒戸にて碁を打ちけるに、御簾をかかげて見る物あり。「誰(た)そ」と見向きたれば、狐、人のやうについゐて、さしのぞきたるを、「あれ、狐よ」とどよまれて、まどひ逃げにけり。 未練の狐、化け損じけるにこそ。 ===== 翻刻 ===== 五条内裏には妖物有けり。藤大納言殿 かたられ侍しは。殿上人ども黒戸にて 碁をうちけるに。御簾をかかげて見る 物あり。たそと見むきたれば。狐人のやう につゐゐてさしのぞきたるを。あれ狐/k2-64l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0064.jpg よと。どよまれてまどひにげにけり。未練 の狐ばけそんじけるにこそ/k2-65r http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0065.jpg