徒然草 ====== 第208段 経文などの紐を結ふに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 経文などの紐を結(ゆ)ふに、上下(かみしも)よりたすきにちがへて、二筋(ふたすぢ)の中より、わなの頭を横ざまに引き出だすことは、常のことなり。 さやうにしたるをば、華厳院の弘舜僧正、解きて直させけり。「これは、このごろやうのことなり。いとにくし。うるはしくは、ただ、くるくると巻きて、上より下へ、わなの先をさしは さむべし」と申されけり。 古き人にて、かやうのこと知れる人になん侍りける。 ===== 翻刻 ===== 経文などの紐をゆふに。上下よりたすき にちがへて。二すぢの中より。わなの頭を よこさまにひき出す事は。常の事也。さ やうにしたるをば。華厳院弘舜僧正 ときてなをさせけり。是は此比やうの事 也。いとにくし。うるはしくは。ただくるくる とまきて。上より下へ。わなのさきをさしは さむべし。と申されけり。ふるき人にてか やうの事しれる人になん侍りける/k2-51l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0051.jpg