徒然草 ====== 第196段 東大寺の神輿東寺の若宮より帰座の時源氏の公卿参られけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 東大寺の神輿(しんよ)、東寺の若宮より帰座の時、源氏の公卿参られけるに、この殿(([[:text:turezure:k_tsurezure195.txt|前段]]の久我通基・源通基を指す。))、大将にて先を追はれけるを、土御門相国((土御門定実・源定実))、「社頭にて警蹕、いかが侍るべからん」と申されければ、「随身の振舞ひは、兵仗(ひやうぢやう)の家が知ることに候ふ」とばかり答へ給ひけり。 さて、後に仰られけるは、「この相国、北山抄を見て、西宮の説((西宮記))をこそ知られざりけれ。眷属の悪鬼・悪神を恐るるゆゑに、神社にて、ことに先を追ふべきことわりあり」とぞ、仰せられける。 ===== 翻刻 ===== 東大寺の神輿。東寺の若宮より帰 座の時。源氏の公卿まいられけるに。此殿 大将にてさきををはれけるを。土御門相国。 社頭にて警蹕いかが侍るべからん。と申 されければ。随身のふるまひは。兵仗の家 が知事に候とばかり答給けり。さて 後に仰られけるは。此相国。北山抄を/k2-47l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0047.jpg 見て。西宮の説をこそしられざりけれ。 眷属の悪鬼悪神ををそるる故に。 神社にてことにさきををふべき理り ありとぞおほせられける/k2-48r http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0048.jpg