徒然草 ====== 第178段 ある所の侍ども内侍所の御神楽を見て人に語るとて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== ある所の侍(さぶらひ)ども、内侍所(ないしどころ)の御神楽(みかぐら)を見て、人に語るとて、「宝剣をば、その人ぞ持ち給ひつる」など言ふを聞きて、内なる女房の中に、別殿の行幸には、昼御座(ひのござ)の御剣にてこそあれ」と、忍びやかに言ひたりし。心にくかりき。 その人、古き典侍(ないしのすけ)なりけるとかや。 ===== 翻刻 ===== 或所のさふらひども。内侍所の御神楽 を見て人にかたるとて宝釼をば其人ぞ もち給つるなどいふを聞て。うちなる女 房の中に。別殿の行幸には。昼御 座の御釼にてこそあれと。しのびやかに いひたりし。心にくかりき。その人ふるき 典侍なりけるとかや/k2-34l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0034.jpg