徒然草 ====== 第90段 大納言法印の召し使ひし乙鶴丸やすら殿といふ者を知りて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 大納言法印の召し使ひし乙鶴丸(おとづるまる)、やすら殿といふ者を知りて、常に行き通ひしに、ある時、出でて帰り来たるを、法印、「いづくへ行きつるぞ」と問ひしかば、「やすら殿のがり、まかりて候ふ」と言ふ。 「そのやすら殿は、男か法師か」と、また問はれて、袖かき合はせて、「いかが候ふらん。頭(かしら)をば見候はず」と答へ申しき。 などか、頭ばかりの見えざりけん。 ===== 翻刻 ===== 大納言法印のめしつかひし乙鶴丸。 やすら殿といふものを知て。常に行 通しに。或時出て帰来たるを。法印 いづくへ行つるぞと問しかば。やすらどのの がり。まかりて候。といふ其やすら殿は。男 か法師かと又とはれて。袖かきあはせて。 いかが候らん。頭をば見候はずと答申/w1-67l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0067.jpg き。などか頭ばかりのみえざりけん/w1-68r http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0068.jpg