徒然草 ====== 第86段 惟継中納言は風月の才に富める人なり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 惟継中納言((平惟継))は、風月の才に富める人なり。 一生精進にて、読経うちして、寺法師((三井寺の僧))の円伊僧正と同宿して侍りけるに、文 保に三井寺((園城寺))焼かれし時、坊主にあひて、「御坊(ごばう)をば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申さめ」と言はれけり。 いみじき秀句なりけり。 ===== 翻刻 ===== 惟継中納言は。風月の才にとめる人也。 一生精進にて読経うちして。寺法師 の円伊僧正と同宿して侍けるに。文 保に三井寺やかれし時。坊主にあひ て御坊をばてら法師とこそ申つれど。寺 はなければ今よりは。ほうしとこそ申 さめといはれけりいみじき秀句也けり/w1-64r http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0064.jpg