徒然草 ====== 第83段 竹林院入道左大臣殿太政大臣にあがり給はんに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 竹林院入道左大臣殿((西園寺公衡))、太政大臣にあがり給はんに、なにのとどこほりかおはせんなれども、「珍しげなし。一上(いちのかみ)にてやみなん」とて、出家し給ひにけり。 洞院左大臣殿((洞院実泰))、このことを甘心(かんしん)し給ひて、相国((太政大臣))の望みおはせざりけり。 「亢竜((「かうりやう」と読む。「亢竜」は底本「元龍」。諸本により訂正。))の悔いあり」とかやいふこと侍るなり。月、満ちては欠け、もの、盛りにしては衰ふ。よろづのこと、先のつまりたるは、破に近き道なり。 ===== 翻刻 ===== 竹林院入道左大臣殿太政大臣にあがり 給はんに。なにのとどこほりかおはせんなれ ども。めづらしげなし一上にてやみなん とて出家し給にけり。洞院左大臣殿 此事を甘心し給て。相国の望おはせ ざりけり元龍の悔ありとかやいふこと 侍る也。月満てはかけ。物盛にし ては衰ふ。万の事さきのつまりた るは。破にちかき道なり/w1-62l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0062.jpg