徒然草 ====== 第39段 ある人法然上人に・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== ある人、法然上人に、「念仏の時、睡(ねぶ)りにをかされて、行を怠り侍ること、いかがし て、この障(さは)りを止(や)め侍らん」と申しければ、「目の覚めたらんほど、念仏し給へ」と答へられたりける。いと貴かりけり。 また、「往生は、一定と思へば一定、不定と思へば不定なり」と言はれけり。これも貴し。 また、「疑ひながらも念仏すれば、往生す」とも言はれけり。これもまた貴し。 ===== 翻刻 ===== 或人。法然上人に。念仏の時睡にをか されて。行をこたり侍る事。いかがし て此さはりをやめ侍らんと申ければ。目の さめたらんほど念仏し給へとこたへら れたりける。いとたうとかりけり。又 往生は一定とおもへば一定。不定と思へば 不定也といはれけり。これもたうとし。 又うたがひながらも念仏すれば。往生す/w1-31r ともいはれけり。これも又たうとし/w1-31l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0031.jpg