徒然草 ====== 第33段 今の内裏作り出だされて有職の人々に見せられけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 今の内裏作り出だされて、有職(いうそく)の人々に見せられけるに、「いづくも難なし」とて、すでに遷幸の日近くなりけるに、玄輝門院((藤原愔子・洞院愔子))御覧じて、「閑院殿の櫛形(くしがた)の穴は、まろく、縁(ふち)もなくてぞありし」と仰せられける、いみじかりけり。 これは葉(えう)の入りて、木にて縁をしたりければ、誤りにて直されにけり。 ===== 翻刻 ===== 今の内裏作り出されて。有職の人々 に見せられけるに。いづくも難なし とてすでに遷幸の日ちかく成ける に。玄輝門院御覧じて閑院殿のくし がたの穴は。まろくふちもなくてぞ有 しと仰られけるいみじかりけり。 是はえうの入て。木にてふちをしたり ければ。あやまりにてなをされにけり/w1-27l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0027.jpg